貸金業法では、原則として年収3分の1までの借り入れに限られるとする、総量規制が設けられています。
しかし総量規制の対象外となるローンの利用により、総量規制の年収3分の1を超える融資を受けられます。
総量規制の対象外となる借入には、以下の3種類の借入方法があります。
- 総量規制の例外貸付を利用する
- 総量規制の除外貸付を利用する
- 貸金業者に該当しない金融機関のローンを利用する
上記の借入方法と具体的なローンの借入先について解説していきます。
この記事でわかること
- すぐに借りたい場合は例外貸付に該当する消費者金融の借り換え・おまとめローンが最適
- 銀行のカードローンは総量規制の対象外だが審査が厳しい
- SMBCグループのプロミスとアイフルは総量規制以上の融資にも積極的で即日融資も可能
- 総量規制の対象外で借りるためには安定した収入が必要
総量規制の対象外となる3種類の借入方法について、上から順番に解説していきます。
例外貸付の利用により総量規制を超える借入が可能
例外貸付の利用によって、総量規制の年収3分の1を超える借り入れができます。
例外貸付は、返済能力に問題がないまたは借入の必要性や緊急性が高い場合に例外的に許されている貸付方法で、顧客の利益の保護に支障が出ない貸付のことです。
特徴として借入額が借入残高に算入されるため、借入残高が総量規制を超過した後は例外貸付や除外貸付を除いた金額までの借り入れに限ります。
以下は、日本貸金業協会によって発表されている例外貸付の一覧です。
総量規制の「例外貸付」に分類される契約
①顧客に一方的に有利となる借換え
②借入残高を段階的に減少させるための借換え
③顧客やその親族などの緊急に必要と認められる医療費を支払うための資金の貸付け
④社会通念上 緊急に必要と認められる費用を支払うための資金(10万円以下、3か月以内の返済などが要件)の貸付け
⑤配偶者と併せた年収3分の1以下の貸付け(配偶者の同意が必要)
⑥個人事業者に対する貸付け(事業計画、収支計画、資金計画により、返済能力を超えないと認められる場合)
⑦新たに事業を営む個人事業者に対する貸付け(要件は、上記⑥と同様。)
⑧預金取扱金融機関からの貸付けを受けるまでの「つなぎ資金」に係る貸付け(貸付けが行われることが確実であることが確認でき、1か月以内の返済であることが要件)
引用元:貸金業法より 総量規制が適用されない場合について|日本貸金業協会
例外貸付に分類される契約には、以下の借入方法が含まれます。
- 消費者金融による借り換えやおまとめローン
- 配偶者貸付
- 個人事業主に向けたビジネスローン
それぞれの概要について解説していきます。
すぐに借りたい場合は消費者金融の借り換えやおまとめローンが最適
すぐに借りたい場合は、消費者金融による借り換えやおまとめローンが最適です。
消費者金融による借り換え又はおまとめローンは例外貸付に該当し、総量規制の対象外となるため、総量規制を超える借入ができます。
大手消費者金融は審査が早く、即日融資も可能です。
借り換えやおまとめローンはすでに借り入れしているローンの返済のみで、新たな借入はできません。
借り換えローンとは、現在カードローンを契約している借入先から新しい借入先に乗り換え、現在のカードローンを清算するためのローンのことです。
現在よりも金利の低いカードーローンに借り換えると、月々の返済額を減らせる可能性があります。
おまとめローンは借り換えローンの一種で、複数社からの借り入れを一つにまとめられる商品です。
利息の支払いが軽減できる、返済計画を見直し管理しやすくなるなどの利点があります。
借入を一本化することで借入金額が高くなり、適用金利が下がって利息が減額されるためです。
月に何度もあった返済日が1度にまとまるため、返済計画も立てやすくなります。
さらにおまとめローンは、複数の借入があっても借りられることに特化しているため、他の借入方法に比べて審査が通りやすい傾向です。
他には、配偶者貸付も総量規制の例外貸付に該当します。
配偶者貸付は配偶者と合算した年収3分の1まで借入が可能
配偶者貸付では、年収額を配偶者の年収と合算できるため、収入がないまたは収入の少ない場合も配偶者と合算した年収額の3分の1まで融資を受けられます。
そのため自分に収入がなくても借入できる可能性がある、配偶者と収入を合算することにより融資枠を大きくできる、という利点があります。
専業主婦かパートで収入を得ている兼業主婦かに関わらず、配偶者の同意があれば利用可能です。
利用には配偶者の収入を証明する書類、住民票などの夫婦の間の身分関係を証明する公的書類、配偶者貸付の締結や信用情報の提供に関する同意書などの書類が必要となります。
個人事業主が事業資金を借入する場合のビジネスローンも、例外貸付に該当します。
個人事業主は事業資金なら年収額に関係なく借入が可能
個人事業主が事業資金の目的で利用するローンは事業計画や収支計画の提出により、年収額に関係なく借入が可能です。
ビジネスローンは個人事業主の年収額だけでなく、事業の収益も見込んで融資金額を決定します。
総量規制の対象外となり、審査により返済能力があると認められた場合は、総量規制以上の借入も可能です。
設備投資や事業の拡大に向けての融資を個人事業主が受ける場合、総量規制の年収3分の1以上の高額となる場合があります。
その点を考慮して個人事業主向けビジネスローンは、総量規制の例外となる措置が取られています。
例外となるのは事業資金のみであるため、個人事業主でも生活費を通常のカードローンで借りる場合は総量規制の対象です。
例外貸付以外にも資金の使用目的が決まっている場合には、除外貸付に該当する借入方法を利用する案もあります。
使用目的が決まっている資金なら除外貸付を利用できる場合もある
除外貸付は住宅や教育など貸付金額が高額になる場合が多く、もともと年収の3分の1を基準とするのが不適切な契約に適用される貸付方法です。
総量規制を超える借入が可能で、例外貸付と違って借入額が借入残高に算入されないため、その後の借入には影響しません。
資金使途が明確に決められているローンのため利用は限定されますが、すでにあるローンの返済が済んでいなくても新たな借入が可能です。
除外貸付に該当する貸付方法には、以下のようなローンがあります。
- 目的別ローン
- 高額な医療費の借入
- 不動産担保の借入
- 有価証券担保の借入
- クレジットカードのショッピング枠
目的別ローンには住宅ローンや教育ローン、自動車ローンなどが含まれるため、資金の使用目的が除外貸付のローンに該当する場合は検討する価値があります。
使用目的が限定されず、生活費や日常での買い物に使う資金の貸付方法としては、クレジットカードのショッピング枠も候補の1つです。
総量規制により借り入れできない時にも、ショッピング枠を利用して商品を購入できます。
クレジットカードのショッピング枠を利用すると買い物した分の代金が後払いとなり、翌月に返済するのが難しい場合は、分割払いやリボ払いも利用可能です。
同じクレジットカードでもキャッシング機能は、総量規制の対象となります。
総量規制の対象外となる借入方法には、例外貸付と除外貸付以外に貸金業者ではない金融機関のローンを利用する方法があります。
貸金業者ではない金融機関のローンは総量規制の対象外
総量規制は貸金業者からの借入を対象としているため、銀行やJAバンク、労金などの貸金業者ではない金融機関は対象外となります。
金融機関のカードローンは消費者金融に比べ、金利が低い利点があります。
しかし手続きに時間がかかる場合が多く、即日で融資を受けるのは厳しい状況です。
特に銀行のカードローンは審査が厳格化されており、手続きの仕組み上即日の融資は困難です。
銀行の即日融資の停止については、以下のような報道もされています。
国内銀行が来年1月からカードローンなどの個人向けの新規貸し出しに関し、即日の融資を取りやめる見通しとなったことが15日、分かった。
(中略)
運用が始まれば、融資審査には数日かかるようになるという。
引用元:産経新聞「即日融資」を停止、銀行カードローン縮小へ 2017年9月15日
銀行のカードローンは、すぐに借りたい人には不向きな借入方法なうえ、さらに審査の面でも利用が難しいと言えます。
銀行のカードローンは総量規制以上の融資の実施は難しい
銀行のカードローンも総量規制の対象外ですが、総量規制以上の融資を実施するのは難しい状況です。
2017年に金融庁が銀行に対して自主規制を命じたことを受け、銀行は総量規制以上の融資に対して消極的な姿勢を取っています。
さらに銀行は個人への融資額が貸金業者を上回っていることを指摘され、カードローン審査の厳格化が求められています。
以下は、銀行のカードローン審査の厳格化についての報道です。
全国銀行協会は3月にもカードローン審査の厳格化に向けた対応策を打ち出す。自主的に利用者の年収や他社からの借り入れ状況をより正確に把握するよう促す。銀行による過剰融資が、多重債務問題につながりかねないとの懸念に対応する。
引用元:日本経済新聞 銀行カードローン、厳格審査へ自主規制 全銀協 多重債務防止2017年2月21日
総量規制以上の借入では複数の借入先からお金を借りている場合が多く、借入残高も高額となるため、審査に通らない可能性も高くなります。
総量規制の対象外である金融機関のうち、より審査に通る可能性が高いのはJAバンクと労金です。
JAバンクは条件を満たす限り総量規制以上の借入も可能
JAバンクはJAバンク法に則った貸付をおこなっているため、全てのローンが総量規制の対象外となり、総量規制を超える借入も可能です。
銀行に比べて総量規制を超える貸付に前向きな傾向があり、消費者金融に比べて金利が低いのも特徴です。
さらに申込時の年齢が75歳までのローンもあり、銀行や消費者金融に比べて幅広い年齢に対応しています。
しかしJAバンクのローンを利用するためには、いくつかの条件があります。
- JAの営業エリアに居住していること
- JAの組合員に加入していること
組合員の会員区分には正組合員と准組合員の2種類があり、営業エリアに居住している人で1,000円以上を目安に出資金を預けていると、農業を営んでいなくても准会員の資格が得られます。
ただし審査に通るには年収額が重視されるため、事業所によって多少変わるものの農業で生計を立てている正組合員では150万円、准組合員の場合200万円以上の年収が目安です。
一例として、JAたかつきの公式ホームページにも多目的ローンの利用条件に年収額が記載されています。
原則として、前年度税込年収が200万円以上ある方(農業者の方は150万円 以上)(自営業者の方は前年度税引前所得とします。)
引用元:JAたかつき 商品概要説明書|ご利用いただける方 多目的ローン
さらにJAバンクに口座が必要となり、申し込みから口座開設までの手続きに2週間ほどかかります。
その後でローンの申し込み手続きをおこなうため、すぐにお金が必要な人には不向きな方法です。
労金のローンは組合員なら金利が優遇される
労働金庫法により貸付を実施している労金のローンも総量規制の対象外のため、総量規制を超える借入ができます。
労金は労働組合と生活協同組合が運営する金融機関で、営利ではなく勤労者の利益を目的に運営されています。
勤労者を中心に融資をおこなっているため、銀行に比べて審査が通りやすく、金利も低いのが特徴です。
労金のローンを利用するためには、いくつかの条件があります。
- 労金の営業エリアに居住または勤務している
- 会員組合員・生協組合員・一般勤労者のいずれかに該当する
労金には以下の3つの区分があり、会員組合員は所属する労働組合が労金に加入していること、生協組合員は生協への加入が必要です。
- 会員組合員
- 生協組合員
- 一般勤労者
いずれにも該当しない場合は、自分が居住するまたは勤務しているエリアの店舗に対する1,000円の出資により、一般勤労者の会員として申し込めます。
区分によってローンの金利が変わり、一般勤労者よりも生協組合員や会員組合員のほうが有利になるため、組合員に該当する人は検討してみる価値があります。
しかし労金のローンを利用するには一定以上の勤続年数と年収、手続きにかかる時間が必要です。
たとえば、近畿ろうきんの多目的ローン「ライフエール」のご利用できる方には、勤続年数と年収に関して以下のように記載されています。
引用元:近畿ろうきん 商品説明書|ご利用いただける方 多目的ローン「ライフエール」
- 同一勤務先に原則1年以上勤務されている方、営業3年以上の個人事業主・家 族従業員の方
- 安定継続した収入があり、前年税込み年収が150万円以上ある方(個人事業 主・家族従業員の方は、過去3年分の所得を確認させていただきます)
店舗やローンの種類にもよりますが、手続きには1ヶ月ほどかかることもあるため、すぐに借りたい人には向いていません。
会員組合員に該当し、お金が必要な時期までに期間がある人には低金利で借りられる利点があります。
銀行で総量規制以上の融資を受けるのは難しく、JAバンクや労金では借入までに時間がかかるため、なるべく早く借りたい場合は大手消費者金融の借り換えまたはおまとめローンが最適です。
大手消費者金融の借り換え又はおまとめローンなら即日融資も可能
大手消費者金融の借り換え又はおまとめローンは即日融資も可能で、総量規制の対象外となるため、なるべく早く総量規制以上の融資を受けたい場合に最適の借入方法です。
審査の早さ以外にも金利の低いローンへの借り換えで、金利の負担や毎月の返済額が軽減する、段階的に借入残高が減少するなどの利点があります。
利息制限法で貸付の上限金利が定められているため、現在の借入残高が100万円以上を超える場合は、利息の実質年率15%以下が保証されます。
借入時の上限金利について
引用元:日本貸金業協会 貸金業法より
- 元本の金額が10万円未満のときの上限金利 → 年20%
- 元本の金額が10万円以上から100万円未満のとき上限金利 → 年18%
- 元本の金額が100万円以上のときの上限金利 → 年15%
しかし借り換え又はおまとめローンはどこの消費者金融でも扱っているわけではありません。
消費者金融の中でおまとめローンを積極的に扱っている会社は、SMBCグループのプロミスとアイフルです。
これらの会社は、借り換え後の金利が現在より低くなるよう配慮された改正貸金業法に則っているため、現在より確実に金利を下げられます。
SMBCグループのプロミスのおまとめローンは即日融資も可能
SMBCグループのプロミスのおまとめローンは、迅速な審査で即日融資も可能です。
WEBでの申込ができず来店での申込が必要となるため、来店する手間よりも審査の早さを優先する人に向いています。
最短で25分で審査完了できるため、手続きの流れや審査の早さは通常のカードローンと変わりません。
SMBCグループのプロミスは、総量規制を超える融資にも前向きな姿勢です。
公式サイトにも、「おまとめローン」の対象者として貸金業者から複数の借入がある人や、総量規制の年収3分の1を超える借入がある人と記載されています。
申込条件は年齢20歳以上65歳未満で、安定した収入があることです。
アルバイトやパートなどで安定した収入がある場合は、学生や主婦も申し込めます。
ただし他の貸金業者からの借入のみが対象となり、銀行のカードローンやクレジットカードのショッピング枠に「おまとめローン」は利用できません。
銀行カードローンやクレジットカードのショッピング枠の一本化にも対応しているのは、アイフルの借り換え又はおまとめローンです。
アイフルの「おまとめMAX」ならWEBで手続きが完結できる
アイフルの借り換え又はおまとめローンには、「かりかえMAX」と「おまとめMAX」の2種類があり、「おまとめMAX」はWEB上で契約手続きを完結できます。
WEBでは24時間365日手続きできるため、土日祝日の申込にも対応しています。
アイフルを初めて利用する人は「かりかえMAX」、すでにアイフルのローンを利用している人は「おまとめMAX」が対象です。
銀行のカードローンやクレジットカードのショッピング枠の一本化にも対応しているため、これらの借入が既にある人にも利点があります。
借り換え又はおまとめローンは複数の業者からの借入で高額になる場合も多く、即日融資も可能ですが、通常のカードローンよりも審査に時間がかかる傾向です。
急ぎの場合は、WEBで申し込みした後に電話で急いでいる旨を伝えると、優先的に審査してもらえます。
申込時の年齢が65歳までのローンが多い中、アイフルの「かりかえMAX」と「おまとめMAX」は69歳まで申込可能です。
原則として自宅や勤務先に電話での在籍確認をおこなっていないため、家族や勤務先に知られる可能性が低く、安心して利用できます。
銀行などに比べると審査の通りやすい傾向のある消費者金融ですが、審査に通過するためには安定した収入や収入を証明する書類が必要です。
総量規制の対象外の借入には安定した収入と収入証明書が必要
おまとめローンのような総量規制の対象外のローンを申し込むためには、安定した収入と収入証明書が必要です。
総量規制の対象外のカードローンではほとんどの場合、必要書類として収入証明書の提出を求められます。
信頼性の高い書類によって顧客の資力を把握し、返済能力の調査が求められるためです。
日本貸金業協会のホームページでは収入証明書が必要な場合について、以下のように記載されています。
引用元:日本貸金業協会「年収を証明する書類」の提出が必要な場合があります
- ある貸金業者から50万円を超えて借入れる場合
- 他の貸金業者から借入れている分も合わせて合計100万円を超えて借入れる場合
総量規制を超える借入をおこなう人はいずれかに該当する場合が多いため、手続きを円滑に進めるためにも手元に収入証明書を準備しておきましょう。
収入証明書として有効な書類には、以下の物があげられます。
- 源泉徴収票
- 直近2ヶ月分の給与明細書
- 確定申告書、青色申告書
- 住民税決定通知書、納税通知書
- 所得(課税)証明書
- 年金証書、年金通知書
審査には顧客の返済能力が大きく影響するため、借入残高の総額が年収を超えていないかや、返済が滞っていないかも重要な要素です。
借入残高が年収を超える場合や返済が滞っている場合は審査に通過が困難
総量規制の対象外であっても、借入残高の総額が年収を超える場合や返済が滞っている場合は、審査に通るのが難しくなります。
顧客の年収に対して返済額が大きくなりすぎると返済できなくなる可能性があり、返済できない人が増えると、金融機関や貸金業者にとって不利益になるためです。
審査の際に金融機関や貸金業者は顧客の信用情報を照会し、過去のローンの支払いに延滞や滞納がなかったか調査します。
過去のローンの支払いに延滞や滞納があった場合、新しい借入に対して延滞や滞納が出る可能性があるため、審査に不利となります。
総量規制の対象外で新たに借り入れするためには、すでに組んでいるローンの滞りない支払いが大切です。
参考オンライン資料